1月某日、隼の心は揺れていた。
「見に行こうか、見に行くまいか」
どうせDVDを買いに行くことは目に見えている。
前売りも買い損ねた今、見に行く意味があるのかと。
誰かが言った。
「まだ生きているコンテンツに、金を落とさないでどうする」
隼は再び葛藤した。悩みに悩んで悩みぬいた。時には湯あたりするほどに考え込んだ。
この頃だっただろうか、ようやく行く決心を固めたのは。
「確かに修論は思ったより進んでいない。まだ20 %、否、もっと低いかもしれない。1月末に提出だ。もう一年遊べるドン? いや、これが出せなきゃ、人生棒に振っちまう。
だが、ここで行かずしてどうするのか! やらないで後悔より、やって後悔だ!」

そして1月8日、隼は大学近くの映画館に行く道を、ほくほくと歩いていた。
「そういえば、一人で映画見るの初めてだ」
上映は11時から、しかし着いたのは10時。
1時間、パンフをめくりながら、原作を予習。気持ちが昂ぶりすぎて、途中、手が震える。
「やっぱりグッズも買えばよかったかな……いや、まぁ私の嫁じゃないし……」
そして開場のアナウンス。劇場特典の冊子を受け取った隼はこう思った。

「い、意外と、厚い……」

開幕まではもう少しある。他の客もそうするように、1ページ1ページ丁寧に読み進める。
成程、確かに阿良々木くんって困ってる人ほっとけないんやな……。
半分行くか行かないかのところで、ベルが鳴った。いよいよである。
おきまりの宣伝を見ながら、そういえば前に映画を見に行ったのはいつだろうか、夏だった気がするから半年か、早いペースだ、ところで人が少なくて両隣空いてるのは喜ばしいが、右の1個とばし隣のおばさま、がさごそをそろそろ止めていただけないだろうか、あと斜め前の青年、早々に頭の位置を落ち着けていただきたい、と考えていた。
そしてようやく、始まった。

以下、ネタバレ。
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by hayabusa-l19-96 | 2016-01-10 22:24 | 戯言