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戦友

ワーカホリックならぬワードホリックになりつつあります、縡月です(ぇ
最近執筆してるか本読んでるかしかしてないもんね……。
そんな感じで、そろそろ本がたまってきているので感想も書きたいですね。
というか、さっき先生から連絡があって、土曜日授業で早めに終わらし夏にそなえるて……orz 

さてさて、本日は予告通り、真帆さんと晏姉のお話です。中学生真帆さん登場ですよ。←
誰しも若い頃はあって、それが今につながっているんだよー、的なお話ですので、トリックとかあんまり気にしないでいただけると幸いです。だって一時間ぐらいで適当に考えちゃった奴だかr(ヲイ
では、本編はmore以下でー。

 成田真帆。今でこそ安楽椅子探偵としてその名を轟かせ、その道で大活躍しているのだが、実は彼女、昔は超行動派で、父と同じように現場を見て捜査するのが好きだった。
 そんな彼女が、何故今のように、ほとんど自分は現場に出ず、資料と部屋でにらめっこして謎を解いてしまえるようになったのか。それを語るには、もう一人、彼女の師匠でもある幼馴染、八柳晏との物語をしなければならない。
 これは安楽椅子探偵成田真帆の誕生秘話であり、同時に八柳晏(やなぎあん)が科捜研で働く事を志したきっかけとなった、とある小さな事件の話である。






 八柳晏は中学生の時から、幼馴染である真帆の父、賢吾に憧れ、自身も警察で働きたいと思っていた。成田真帆も、そんな晏に憧れ、同じ志を持つようになる。晏には話していなかったが、その頃にはもう父は警察を辞め、探偵として独立していた。だから、とても警察が魅力的なものだとは思っていなかった。しかし、晏が楽しそうな様子で将来の事を話すのを見ると、ついつい乗ってしまうのである。勿論、晏は全部知っていて、尚且つ賢吾から自分のようにはなるな、と真帆を説得してほしい、という事で、探偵ではなく警察を志すようになったのだが。もっとも、晏は賢吾の生き方それ自体に憧れていたので、何故自分のようになるな、というのかは分からなかったが、真帆にしてみれば、家にろくに帰らない父は探偵だろうが刑事だろうが、父として夫として失格の彼を目指す気には、とてもなれなかったであろう。つまり、成田親子の考えは一致していたのである。その辺り、そこに晏が入り込む余地はなかったようにも思える。だが、晏がいたからこそ、真帆がそちらの道に興味を示したのもまた、事実ではあった。その辺りにおいては、やはり彼女の存在というのは大きいものがあっただろう。
 さて、そんな彼女達だが、家がお隣同士という事もあり、幼い頃からいつも一緒だった。元々面倒見の良かった晏が、共働きの両親の代わりに真帆の世話を焼いたのがきっかけではあるのだが、何より晏は真帆の聡明さを気に入っている。だから本気で、自分の弟子にしようと思っていた。後に、晏にも晨(しん)という妹が出来るのだが、いかんせん娘ほど年が離れていた為、鍛えようがなかったのである。そこで、妹のように可愛がってきた真帆をしたがえて、警察のまねごとをしていたのであった。小さいうちは本当にまねごとで、町内をパトロールと言いながら散歩しては、
「真帆隊員、異常はないか?」
「はい、ないでありますあんねぇ!」
と、きゃっきゃと遊んでいるだけだったのだが、最近ではマナー違反の若者を注意したり、万引き犯を捕まえるなど、そこそこ治安維持に貢献していた。
 これは、そんな二人がいつものパトロールを終えて帰宅した、ある夕方の事である。
 いつものように、かつあげしている中学生をそれとなく止めさせたり、路上駐車をしている自転車などに注意の張り紙をして、彼女達は帰宅した。真帆の両親は共働きだった為、晏の家で一緒に夕食をとる事も少なくはなかった。だからその日も、まず晏の家の方に帰ってきた訳である。
「ただいまー」
「おばさん、今日もお邪魔しまーす」
 鍵を開け、玄関に入る。すると、いつもなら明るい声でねぎらいの言葉をかけてくれる晏の母の声がしない。
「お母さん? いないのー?」
 リビングには灯りが付いたまま。だから彼女達は、どこかちょっとした買い物にでも行ったのだろう、そう思っていた。ところが。
「あれ? 置手紙だ」
 食卓の上に、それはあった。筆跡からどうやら母の物である、と晏は推測した。
「晏へ。今日は帰りが遅くなるので、お隣の真帆ちゃんに晨の事を預けました。パトロールのついでにでも、晨を迎えにいってあげてね。夕飯は冷蔵庫の中です。あっためて食べてね。母より」
 案の定、それは母からのであった。手紙を読み終えると、晏はちょっと怒ったように言う。
「こら、真帆! また晨の世話ほっぽり出して、あたしのとこに来たなー?」
 当時真帆は中学生、晏は高校生であった。その為、晏の母は用事があって遠くに行く場合、先に帰ってくる真帆に預けていく事が多かったのである。
「ごめんなさーい。だって晨ちゃん、大人しくって良い子だし。それに寝ちゃってたから、そうっとしておいてあげた方がいいかなー、と思って」
 小さく舌を出し、手を合わせて謝る姿はとても真剣味があるとは言えなかった。それもそうだろう。何故なら、確かに、晨はその年にしては大人しい良い子だったので、起きている時は一緒にパトロール、眠ってしまった時にはどちらかの家で寝かせておく、というのが定着していたのだから。
「たくっ。それならそーと、先に言いなさいよ!」
 それを知りつつ、あえてきつい言い方をする晏。
「だって、晏姉はもう知ってるかと思ったんだもん」
「しょうがないなー。ほら、さっさと迎えに行くよ」
 最後には晏が折れて終結する、といういつものやり取りを終えると、彼女達は真帆の家へと向かった。
 パトロールに出ていたのはせいぜい一時間。まだ晨は眠っているだろうから、起こさないように彼女を晏の家まで運ぶか、それともそちらに夕飯を持っていった方が良いか、そんな事を話しながら、二人は真帆の家に着いた。ところが。
「あれ? 晨ちゃん? 変だな……」
「どうかしたの? 真帆」
 声のした方へ向かうと、そこはリビングだった。
「ここで寝ていたはずなんだけど、それがいなくなってるのよ」
 布団が落ち、空になったソファを差して、彼女は言う。
「む、起きてどっかで遊んでるのかな……? 晨ー、どこー?」
 年が離れている所為もあってか、晨は一人遊びをするのに慣れていた。その為、晏の家には勿論、真帆の家にもお絵かきセットやお人形などの遊び道具は用意されている。大方、それで遊んでいるのではないか、とこの時二人は楽観視していた。
 しかし、家中どこを探しても、晨はいなかった。この時になって、二人はようやく大変な事になった、と理解したのである。
「どうしよう……どうしよう……」
 責任を感じ、真帆はパニックになっていた。
「だ、大丈夫よ。こんな時こそ、私達の本領発揮じゃない。晨は必ず見つける、ね?」
「うん……」
 念の為、晏はもう一度真帆の家を捜す事にした。他の家ならいざ知らず、勝手知ったる真帆の家だ。人が入れるスペースを捜すだけなら、そこまでプライバシーを侵害する事も無いだろう。それに、先入観を持っていない晏の方がより客観的に広い視野で探す事が出来る。これには真帆も納得して、彼女に其方を任せ、自分はもしかしたら晨が外に出てしまったかもしれない、という可能性を考慮して、街の中を捜す事にした。
 三十分後、町内をぐるりと歩き回ったが、見かけた人もいなければ発見する事も出来なかったので、真帆はしょんぼりと肩を落としながら帰宅した。
 一方の晏も、残念ながら発見には至っていなかった。それでも、彼女は何か手かがりになる物はないか、と周囲にくまなく目を凝らす。すると、何点か違和感があるのに気が付いた。その正体は分からないままであったが、ドアの開く音がしたので、玄関まで迎えに行く。
「どうだった……って聞く意味もないわね」
 意気消沈している真帆を見て、晏は言った。
――という事は、やっぱり晨は外に出た訳じゃないんだ……。
 もしかしたら、さっき感じた疑問がヒントになるかもしれない。そう思いはしたものの、一人で考えているだけでは埒が明かない気もしていた。
「ごめんなさい。晏姉は……?」
「うーん、気になる事はあるんだけど、晨の居場所に辿り着くようなもんじゃないわ」
「気になる事?」
 藁にもすがるような思いで、真帆が尋ねる。
「ああ、いや、真帆っていつもあそこに寝かせてたっけ?」
 晨がこちらで昼寝をする事はよくあるのだが、それは大抵、真帆のベッドだった。だから、彼女はこの家に来た時、まず真帆の部屋に足を踏み入れたのである。しかし、布団には乱れた形跡も無く、彼女自身がソファを差して“晨がいない”と言ったのが気がかりだったのだ。
 すると、予想通りの答えを真帆が返してきた。
「ううん。いつもは私のベッド。でも、今日お布団干してて、まだ用意が出来てなかったから、仕方なくソファに……って、まさか」
「うん、可能性だけどね……」
 流石というべきか。真帆は自分が話している途中に、それに気が付いたらしい。
しっかりしていて大人しい、と言っても、晨はまだ二歳なのだ。目が覚めたら突然知らない部屋で、しかも一人っきりだったら、パニックを起こすのではないだろうか、そう晏は考えたのである。
「その証拠に、布団が大分乱れてる。ソファの位置も、少しずれてるんじゃないかな? 鍵が無理矢理開けられた形跡はないから、とりあえず誘拐犯の線はないとして。じゃあ、どっちかの親が連れていったか、と言えばそれならそれで連絡があるはず……」
 晏はぶつぶつと自分の考えをまとめながら、歩き出す。その後を、真帆がついていく。
「それに、晨の靴はそのまんまなんだよなぁ……」
 きちんとそろえられた靴を見て、彼女は呟く。これで晨が外へ出た可能性も低い、という訳だ。
――弱ったなぁ。晨……どこにいるの。
 二人はそのまま、黙って玄関に佇んでいた。すると、不意に真帆が言った。
「……晏姉」
「ん、どした?」
「私、晨ちゃんの居場所、分かったかもしれない」

 数分後――
「晨!」
「……ふえ?」
「良かったー! もう、勝手に帰ってきてちゃ駄目じゃない!」
「ふにゅう」
「良かった、本当に良かった」
 無事、晨は発見された。“八柳家”の押し入れの中で。
「さて、晏。なんで晨が押し入れの中にいるって分かったの? しかもうちの」
 ようやく晨が見つかったので、一安心した彼女達は、かなり遅くなってしまったが夕食を食べる事にした。その席で、晏は真帆に問うたのである。
「まず、パニックを起こした晨ちゃんがとりそうな行動を考えてみたの。晏姉だったら、どうする?」
「そりゃー、一刻も早くそこから出て、家に……あ、それでうちだと思ったのね」
「そういう事」
――成程。相手の立場になって考える、か。私は周りの物に注目する事しかしなかったから、そんな事思いつきもしなかったわ……。
 優秀な弟子に感心しつつ、いや待てよ、と晏は矛盾点を突き返す。
「でも、晨の靴はそのまんまだったよ?」
 そう。だからこそ、彼女達は晨が外に出ていないという事を前提に、話を進めていたのである。裸足で、という線もあるが、先程確認した所、彼女の足の裏は綺麗なままだった。
 すると、その質問を待ちかねていたかのように、答える代りに真帆は別の問を差し出す。
「晏姉だったら、急いでる時に靴ってはく?」
「ううん。大体サンダルで……ってまさか!」
「そう。玄関に出してあったうちのサンダルで、晨ちゃんは家に帰ってきた訳」
 急いで確認に行くと、そこには確かに見慣れないサンダルが一足、脱ぎ捨てられていた。帰ってきた時は焦っていたので見落としていたが、真帆あたりは案外、自分の推理の裏付けをしていたのではないか、とも晏は思った。その証拠に、同じタイミングで家を飛び出したはずなのに、真帆が現れたのは少し遅れての事だった。
 食卓に戻ると、晨はもう食事を終え、一人でお絵かきをして遊んでいた。
――全く、誰のせいでこんなに苦労したと思っているんだか。
 そう思いつつも、可愛い妹の姿を微笑ましく見ていると、真帆がにこにこ笑っていた。わざと大袈裟に咳払いをしてから、晏は席に着き、話の続きを始める。
「成程ねー。真帆の家の鍵は開けたら勝手に閉まるオートロック。でも中からなら開けられた、と。でもうちにどうやって入ったの?」
 すると、その疑問を解いたのは他ならぬ晨だった。
「しん、かぎあるとこしってるもん!」
「きっと、晏姉がいつも植木鉢の下に鍵隠してるの、見て覚えてたんじゃないかな?」
 二歳とは言え、晨の頭の良さを侮っていた彼女は、驚いて言葉が出なかった。同時に、妹の成長を感じた瞬間でもあった。
 動揺を悟られまい、と晏は口調を強める。
「ふ、ふーん、でも、よく晨が狭いとこ好きだって分かったねー。あたしでも知らなかったのに」
「え? そりゃ、見てたら分かるじゃない」
――え、なんで?
 少なくとも自分の前ではそんな素振りは見せなかった、と思わず首を傾げる晏。
「あれ? 知らなかったの?」
 それを見て、本当に意外そうに、真帆は言った。
「晨ちゃん、お昼寝から起きた時はいつも、私のベッドの下にいるのよ?」
「しん、せまいとこすきー」
 つまり、晏の家にはベッドが無かったので、押し入れに入った、という事だ。パニックになった後だからか、暗くお布団に挟まれた状態に入って落ち着いたら、泣き疲れてそのまま眠ってしまったのだろう。
「へー。知らなかった。そっか、たまにいないと思ったら、押し入れにいたのかー」
――そこは気が付こうよ、晏姉!
 うりうり、と晨の頭を撫でる彼女を見て、つっこみは、心の中だけにした真帆であった。
「でーもさー」
 全ての謎は解き終ったのに、まだ不服なのか、晏は口をとがらせる。
「あたし、真帆の師匠なのに。真帆に抜かれちゃったね」
「でも、晏姉がいなかったらきっと、私にはしんちゃんの居場所は分からなかったわ」
 抜かれるとかそういう問題ではなく、純粋に自分だけでは無理だったと思ったので正直に真帆は言った。同情とかそういうのではなく、心からの言葉である事は晏にも伝わる。
「あたしね、思ったの」
 だから、今まで思い続けていた事を、思い切って口にしてみた。
「真帆は探偵になりなよ!」
 それが例え、憧れの人に止められていた事であっても、自分の意思をはっきりと告げられるのが、晏の良い所でもあった。
「え……でも……」
 これに戸惑ったのは、むしろ真帆の方だった。先述したとおり、賢吾はあまり良い父親とは言えない。そんな彼と同じ道を歩むのには、抵抗があったのである。
 しかし、それを打ち砕いたのもまた、晏の言葉だった。
「真帆には、街の平和を保つ警察官は似合わない! ううん、それはあたしがやる。あたしが、正義を貫く英雄になる。だから真帆、あんたは皆を守ってあげて。誰かのそばで、その人を守る探偵になって!」
 まっすぐで、綺麗な意志だった。それは真帆の胸にすとんと収まる。自分の心の葛藤など、ちっぽけな物に思えてくる程にそれはぴったりと当てはまった。彼女のこれからの“目標”という旗に。
「……うんっ」
 小さく、しかし力強く、真帆は宣言した。
 その後、晨の口からこの件がもれてしまい、晏と真帆が双方の親達に怒鳴りつけられたのは、言うまでも無い。

 人生の転機とも呼べるその事件の後、若干へこみながらも、彼女達は思った。
「私は、大切な人を守りながら戦える探偵になろう」
「あたしは、そんな彼女に少しでも多くの証拠を提示できる相棒となろう」
 かくして、非合法的ながらも数々の難事件を解決する名コンビは誕生したのであった。

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晏姉は“神城龍貴の日常”maneuverより、久々のご登場です。
実は本編でも、真帆さんがどこからか警察の資料を取り出してきた背景にいる方で、大変重要な役割を果たしてくれております。個人的にはこの人で一本書きたいぐらいに好きです。
さて、この話を思いつくきっかけとなったのは、何故行動派の父から安楽椅子探偵が生まれたのか、という作者自身の設定ミスとも呼べる所から出てきました。←
ちなみに、年齢の設定も若干変えてしまったのですよー、と今更ながらに言ってみます。
潤を基準に、大人組(龍貴から上をそう呼ぶ)は二歳ずつぐらいそれぞれ上になっている、はずです。
何故こんな事が起きたか、と言えば、虎季と龍貴の三年前の事件なんて持ちだした僕が悪いのですが、まぁそれは置いといて。
その一番の被害者が今回登場した晨ちゃんです。彼女には今後、再び年齢を変えなければならない運命が待ち受けております。何故か。実はこの子、既存のキャラです。まぁ、本名で出てはいないのですが、今度僕の全ての作品を見直して書きかえる一掃セール?の時にでも、設定が変わる事でしょう。
ええ、彼女も続編に出てくるのですよ。役どころは秘密。

さて、そんなこんなで外伝が何故か続編への前ふりになりつつありますが、最後の憲吾さんの武勇伝は、それの最たるものでしょう。が。
完成まではもう少し時間がかかりそうです……。というか、また一万字を越える予感。
春休み中の完成を目指して頑張りますー。
by hayabusa-l19-96 | 2011-03-31 11:51